2009/12/03 by GLI Japan

【沈東曙】北京富平学校(後編)

(なお、関連記事として、北京富平学校-社会的企業の試み もご覧ください)

我々は絶対に一番強い者ではない

沈東曙さんは自分のやることに対して、ときには厳しすぎる一面がある。「06年以降の3年間、富平がやっているすべてのことは、私たちが3年前に 設計したとおりのことで、ほとんど違わない。これは不自然なことで、われわれに予見の能力が特に強いからではなく、環境に十分な挑戦的要素がなかったから だと言わなければならない。急激に成長し、競争の激しい市場ならこんなことはあり得ない。いまみんなが見ている賑やかさは、ごく小さな世界で起きている出 来事に過ぎない。」沈さんがこれほど社会的投資を強調するのは、彼がこの「環境」そのものを刺激して変化させることを望んでいるからかもしれない。

社会的投資には二つの側面がある。「一つは社会起業家を育てること。特定の領域において、社会的企業を起こす人、ソーシャル・イノベーションを 狙ったプロジェクトに取り組む人を育てる。我々の方法は、“協働によって育てる”こと。我々はそれぞれ異なる領域でパートナーを見つけ、パートナーをメイ ンに据えて育てる。第二は、成長の可能性が大きい社会的企業に投資すること。いい企業、社会的企業はインキュベーションで孵化できるものではない。鍛えら れて成長するもの。我々は彼らに投資できる能力を持ち、彼らを助けたいと願っている。」

どんな人を社会起業家として育てたいのかについて、沈さんは自分たちの「人を見る目」に自信を持っているという。「将来太陽になる人なのかどう か、見分ける自信がある。」「最も大事な仕事は、育てる対象を選ぶこと。対象を正しく選ぶことができれば、仕事の50%は達成できたと考えてよい。人を見 ることがとても大切で、分野が違うと方法も異なるが、共通する基準は、第一にオープンであること。勉強し続けること、自分を変えることをいとわず、自分の やっていることだけにこだわったりしない。次にリーダーシップを取れること、先見の明があり、行動力があり、すぐれたバランス感覚がある。」沈東曙さんが 育てようとしているのは、「本当の変革者と実践者」。「彼らは言うだけではなく、考えることもできる。もっと大事なのは、できるだけやり遂げることができ ること。」「僕たちのところはケンブリッジではない。“考えるだけの人”は要らない。精神貴族を育てる資源はない。」

いかに育てるかについて、沈東曙さんは「パートナーシップ」関係を強調し、協働によって育てることを提唱する。「育てるというよりも、提唱すると いったほうが適切かもしれない。我々にはいまとてもよいパートナーがいる。たとえばその一人は農村発展の分野で、もう一人は高等教育のイノベーション、ほ かにも持続可能な環境の分野、ソーシャル・イノベーションへの投資を行うパートナーもいる。どの分野でも、我々がメインで居続けることはない。」市場経済 において社会的企業は十分に発展可能であること、そして人を見る目に自信があることから、沈東曙さんは育成対象に対してそれほど不安を感じていない。「我 々は彼らを“孵化”するのではない。彼らを支えるだけ。求められるときに、部分的に応えるだけ。前線で活動している人のほうが常に強い。我々にできるのは 手助けのみ。まだやる人がいない場合、我々が先に始めてみるというケースもある。家政業はまさにそう。」「これらの業務では、今後3年間は、できるだけ パートナーをメインにしてやっていきたい。どんな分野でも我々より強い人がいる。我々は決して一番強い者ではない。」

素朴・創造・楽しむ

まとめてみれば、富平の業務は下図のようになっている。二つの業務の柱は、「貧困者に直接サービスを提供すること」と「社会的企業によるサービス 全体のレベルを挙げること」であり、その業務内容にはさらに、「能力技術のトレーニングとコンサルティング」と「資金的支持」の二つに分けられる。

富平の業務内容

貧困者へのサービス提供 社会的企業全体のレベルの向上
能力・技術のトレーニングとコンサルティング 家政学校と家政サービス会社、創業学院、互助ネットワーク、各種トレーニング、コミュニティづくり 協働によって社会起業家を育成する、企業に公益活動に関するコンサルティングを行う
資金的支持 マイクロ・クレジット 社会投資会社

業務の柱を明確にするほか、過去の数年間において沈東曙さんが行った最も重要なことの一つに、組織文化を確立させることがあった。富平の組織文化、それは「素朴、創造、楽しむ」である。

沈東曙さんは楽しそうに説明した。「素朴というのは事実を重んじること、業績を粉飾しないこと。自分たちの仕事に対して客観的に評価する基準を持 ち、石橋をたたいて渡る気持ちで仕事に当たること。理想と原則を守り、質素倹約を守る。創造というのは学習を続け、不確実な環境に対応する能力を身につけ ること。実践という企業家精神を重んじ、失敗を受け入れる度量を持ち、諦めはしない。物事の肝心な部分を把握できる。楽しむというのは、茅先生が主張する ように、社会的快楽と社会的財産の最大化を求め、そのプロセスを楽しむこと。ほかにも、自分の人生を楽しむことができてはじめて他人の人生を助けることが できること、個人が楽しく仕事をすれば、組織の仕事によきリズムをもたらし、余計なプレッシャーを取り除き、愉快な仕事環境を創り上げられることを指し示 す。」平穏無事だと粉飾せず、実践者を尊重し、社会的快楽の最大化を追求しているからこそ、富平は自信を持って「支援組織」に甘んじていられるのだ。

7年間やってきて、沈東曙は自分について「ますます穏やかになってきた」「もはやそんなにプレッシャーを感じない」という。「我々は、変化を好む。物事 は、変わるようにしか変わらない。我々は枠組みを作り、方向的な計画を定め、あとは、その変化を楽しむ。最終的な目的は、適切な人が、適切なことをやるこ と。我々の役割は、この適切な人が出てくるように仕掛けること。いくつかの概念、たとえば社会的企業という概念は、すぐにははっきりと説明できない。それ も無理のないこと。大事なのは20年後に多くのよい事例ができていること、それをみんなでまとめれば、概念は自ずとはっきりしてくる。富平の実力は概念的 な論争を加熱させることにあるのではなく、本当の変化を推進することにある。」

文責:李妍焱

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