環境 人気記事

NEW ACTIVITIES

  • 最新活動報告

PROJECT

1.環境

2.災害

3.高齢社会

4.その他

INNOVATOR

  • イノベーター記事一覧
  • NPO法人日本エコツーリズムセンター
  • 一般社団法人RQ災害教育センター
2013/03/28 by Tanada

湿原の縮小が3億人の生存に影響

20130327-1(製図:宋嵩)

<本文要旨>

2月2日は世界湿地デーである。中国湿地資源調査の最新データによれば、ここ10年来、中国の湿地面積は減り続け、その機能は低下し続けている。そしてそれは、中国の生態系保全および経済・社会の発展に深刻な影響をもたらしている。

湿地の絶え間ない減少をもたらす原因は何か。湿地を守るために、私たちに何ができるだろうか。記者は国家林業局湿地保護管理センターの馬広仁主任を訪ねた。

「『ノロジカは棒で打ち捕ることができ、瓢で川水をすくえば中には魚、キジは自ら鍋に飛び込む(豊かな自然環境)』、『塔頭』(沼沢の代名詞とも言える植物化石)、小葉章(湿地に自生する野草の一種)、限りなく広がる葦原……」国家林業局湿地保護管理センターの馬広仁主任はかつての三江平原をこう表現した。しかし今や、現地にはボロボロになった小さな『塔頭』が少しばかり残るだけ。その周りを歩いても、かつての海綿の上を踏むような感触はない。足元を堅めるというが、硬くなって逆に心配ごとが増えた。

第二次全国湿地資源調査(2009年―2013年)ですでに調査を終了した21の省(及び自治区と直轄市)のデータによれば、ここ10年来、比較可能な基準にもとづいた湿地面積は合計2.9%減少し、その機能も低下し続けているため、中国の生態系保全と経済・社会の発展は深刻な影響を受けている。

揚子江中流・下流に通じる102の湖沼のうち、現存するのは洞庭湖と鄱陽湖のみ

湿地は「地球の腎臓」とも称され、人類にとって最も重要な生存環境の一つとされている。第一次全国湿地資源調査(1996年―2003年)のデータによれば、中国の湿地面積は3,848万ヘクタール(約5.8億ムー、台湾・香港・マカオを含まない)、そのうち天然の湿地は3,620万ヘクタール、人工湿地は228万ヘクタールだ。

馬主任によれば、中国の湿地で縮小面積が最も大きく、最も深刻な状況に陥っているのは、揚子江の中下流域ならびに東北地方の三江平原だ。「千の湖を宿す」と讃えられた湖北省では、大小含めた湖沼数がかつての約1,000か所から260か所あまりになってしまった。三江平原の湿地面積は、以前の500万ヘクタールから91万ヘクタールにまで減少。揚子江の中流・下流に通じる湖の数も、かつての102か所から洞庭湖と鄱陽湖の2か所だけになり、しかも両湖の面積は今も減少を続けている。

「今後、洞庭湖と鄱陽湖まで揚子江と切り離されてしまったら、揚子江はただの何もない水路になってしまいます。洪水を飲み込み、自在に水を補給し、気候を調節する機能も失われるでしょう」と馬主任は語る。中国科学院のある調査によれば、近年、中国西南地方の五つの省で干ばつが継続的に発生していることは、揚子江の中下流域に通じる湖の多くが失われたことと無関係ではないそうだ。

湿地乾燥化の原因は、開墾や埋め立て、不合理な開発などの人為的要因

湿地面積の減少は、気候変動など自然の要因もあるが、主にはやはり開墾や埋め立て、汚染、湿地資源の過度な利用、排水溝の開削といった人為的な要因によると馬主任は考えている。四川省西北部のゾルゲ湿原を例にとれば、1930年代、共産党軍が長征と呼ばれる行軍でこの地を通りかかったとき、人馬が沼沢に足をとられ、前進を阻まれた。内戦終了後、人々は排水路を掘ってこの地を放牧地としたため、湿地の絶えまない「乾燥化」を招いた。近年、湿地の棲家を失ったネズミが狂ったように繁殖を始め、あちこちに穴を掘り、植物の根を齧って植生を退行させるため、土地の砂漠化が起こっている。

不合理な開発利用、それが湿地面積を減少させる重要な原因だ。洞庭湖は数年前、突如ネズミの被害に遭い、億という単位のネズミがそこら中を跋扈した。ゾルゲ湿原と類似した原因の他、現地でポプラを大量に植樹したことも、湿地の乾燥化、生物多様性の衰退、自然界の食物連鎖の断絶と関係がある。

湿地保護区では複数の機関が管理に関わり、土地の権利がどこに所属しているのかが明確でないことも、保護事業の実施に影響を及ぼしている。ある保護区では、主管部署が5~6か所もあり、権限と管轄も重なり合っているため、「皆に管理権限があるため、皆が管理しない」という有様だ。

3億人の生存が湿地に依拠、湿地を守ってこそ食糧の安全が確保される

現在、中国では3億人が湿地に生存を支えられており、湿地の重要性は論を俟たない。「たとえ18億ムーの耕地を維持することができたとしても、食糧の安全確保ができたことにはならない」と馬主任は言う。もし三江平原湿地が消失してしまったら、中国の「東北地方の食糧倉庫」も危うい。揚子江中下流域の湿地がなくなれば、江南地方の魚米の郷も歴史書の中に名を留めるのみとなろう。こうした懸念が現実とものとなれば、中国の食糧安全保障にとてつもない危害をもたらすことになる。

馬主任によれば、湿地の保護と合理的な利用がもたらす生態的経済的価値は相当な規模が期待できる。ある見積もりによれば、鄱陽湖国家級保護区の湿地1ヘクタール当たりの価値は24.9万元に上り、洪湖湿地は24.26万元、海南省の東寨港湿地は、39.65万元、ゾルゲ湿地は20.3万元、三江源湿地は7万元とのことだ。省(あるいは区や市)ごとの見積もりは、たとえば河南省を例にとれば、2011年の省内の全湿地の生態系がもたらす効果・利益の価値の総額は920億元に達する。不完全な統計ながら、2011年だけで中国の国家湿地公園が受け入れた観光客数はのべ2,000万人を超え、観光収入は約50億元に上った。

この他、湿地を利用した栽培業、養殖業、製薬業、鉱業などは、古来より中国人民の生存と発展を支えた重要な資源であり、湿地が民生の保障・改善に果たす意義は重く大きい。たとえば最近、洪湖湿地の水産品加工業は急速な発展を遂げ、ある程度の規模を持つ水産品加工企業は15社に上る。その総生産額は6億元に達し、3万人あまりの雇用問題を解決した。

専門家は耕地保護と同様に湿地保護を期待するも、関連法規は不備

森林、海洋、湿地は地球の三大生態システムだと広く認められている。中国で、前二者は相応する保護法規をもつが、湿地にはない。馬主任は語る。「2003年から、関連部署が中国の湿地保護法を制定しようと活動していますが、いまだに実現していません。それで湿地保護には頼るべき法律の根拠がないという残念な状況となっているのです。湿地補償システムなど、長期に亘って効力のある保護システムもまだできていません」。これらの問題は湿地の造成と保護事業にとても大きな障害となっており、解決が待たれる。

湿地保護問題の議論は、国家レベルに引き上げ、より力を入れるべきだと馬主任は指摘する。6億ムー近い湿地を赤い線で囲み、18億ムーの耕地と同様に厳格に死守するべきだと彼は提案している。また、湿地保護を経済社会発展の評価システムに組み込み、湿地面積、湿地率、保護率の三つの指標を環境保護指標と同様に地方行政担当者の業績評定システムに導入し、地方政府の湿地保護面での行政機能を強化するべきだとしている。しかし現状では、湖南省と江蘇省の二つの省が、湿地率と保護率を自らの業績評価システムに導入したのみだ。

執筆者 潘少軍
執筆者所属 人民日報 http://gongyi.qq.com/a/20130201/000003.htm
翻訳と校正 翻訳:松江直子 校正:棚田由紀子
メディア NGO发展交流网 『湿地萎缩危及3亿人生存』

http://www.ngocn.net/?action-viewnews-itemid-86176

This post is also available in: 簡体中国語

Facebook Twitter 微博

CATEGOLY