2013/02/12 by Tanada

中国の週刊誌『湖湘地理』掲載のLEAD&Beyond訪日研修報告シリーズ(8)

E06(スワンベーカリー) http://csnet.asia/archives/13111 に関し、日中市民社会ネットワーク 代表 李妍焱が書いた寄稿文を掲載します。一部、E06(スワンベーカリー)内に掲載されている文と重複しますが、何卒ご了承ください。

スワンベーカリー

「みにくいアヒルの子」の話は皆さんご存じでしょう。みにくいアヒルの子だと思っていたのが、成長して初めて実は美しい白鳥だったと分かる話です。この話と「スワンベーカリー」で働く障がい者や知的障がい者には共通する点がたくさんあります。みにくいアヒルの子だと思われていた障がい者がスワンベーカリーで水を得た魚のように作業する光景を見ると、彼らがとても美しいことが分かります。

スワンベーカリーは、日本を代表する宅配便業者「クロネコヤマト」の初代社長が、障がい者にとっての「尊厳を持って働ける場所」を実現するため、肝いりで創設した事業です。1998年に設立し、現在は東京の銀座や赤坂といった中心的地域で直営店を3店舗展開、売上高は6億円を超えます。また、スワンベーカリーは日本各地で同じ志を持つ人に対して、無償で技術的な支援を行い、障がい者を雇用する店の創業やそのような店への転業をサポートした。現在の加盟店は25店舗に達しています。主な事業はパンの製造・販売・配送の他、コーヒーなどの飲料も扱っていますが、一部の店舗では手軽でおしゃれなイタリアンやフレンチのディナーも提供しています。現在では、約1300人の障がい者(うち6割以上が知的障がい者)と数百名の健常者が一緒にこれらの店舗で働いています。障がい者の給与額は一般的な授産施設の10倍近くで、もし両親と同居していれば、基本的には自分で生活していける収入レベルを実現しています。これは、日本初です。

スワンベーカリーの主な特色として、4つ強調したいと思います。1つ目は、決して障がい者をセールスポイントにしていない点です。「私たちは普通の企業で、販売しているのは質の良い商品とサービスです」と、社長の海津歩氏は講演会で毎回繰り返して説明しています。スワンベーカリーの店舗は個性的でおしゃれ、商品は上質で味も良く、多くの顧客の支持を得ています。テレビドラマのロケ地に選ばれたり、グルメ雑誌の取材もたくさん来たりしますが、大多数人は、知的障がい者がそこで働いていることには気づきません。「ここの従業員は、普通の人とちょっと違う」と感じるだけで、すべてが正常に順調に動いています。銀座店ではランチで混雑する時間になると、1時間の来店者が200名を超えることもありますが、混乱することはまったくありません。

どうしてここまでできるのでしょうか?それが2つ目の特色である、スワンベーカリーが作り上げた「得意分野をつなぎ合わせたグループ作業の仕組み」によります。知的障がい者はそうでない障がい者と比べて、一般的に突出した得意分野(堪能な事柄)を持っており、得意分野でなら、彼らは非常に辛抱強く、集中し、飽きたりサボったり妥協したりしません。スワンベーカリーでは、新しく採用した障がい者を3ヶ月以上観察しながら育成し、その人の「得意分野」を探り当てます。作業現場では各人の得意分野を組み合わせ、「誰もが必要不可欠な人材」となるよう、互いに補い合う仕組みを作ります。こうすることで、作業効率が格段に良くなるだけでなく、従業員は「自分がいなきゃダメだ」という満足感が得られます。

3つ目の特色は、スワンベーカリーはパン製造所でありながら、パン製造だけに留まらない点にあります。社長の海津氏は常に新しいアイデアを思いつく人で、「重度」の障がい者にも才能を発揮するチャンスを与えようとしています。例えば、「クロネコヤマト」の配送サービスを利用し、離島に住む人に新鮮なパンを玄関先まで届けるサービス。商品の注文はすべてコンピューターシステムを使い、注文の整理作業は、ベッドの上でも操作できるようにしました。そうすれば、寝たきりの障がい者でも従事できる作業になります。「障がいがあっても(健常者と)同じように作業ができ、同じように尊厳を持てる」のです。

4つ目は、スワンベーカリーが常識にとらわれず、異なるセクターの団体や人々、コミュニティと協働して、様々な新企画を実現している点です。例えば、大都市の真ん中にある銀座地区の各商店とタッグを組んで屋上緑化を実現したり、屋上の養蜂場で「銀座蜂蜜」を作ったりしています。また、ローソンと協働でスワンベーカリーの専用コーナーを設けたり、様々な企業とのコラボで、その企業ブランドのケーキを作ってアピール商品にしたりもしています。他にも、地方の町や農村と協働して、現地の特色を生かしたお菓子を開発したり、若いアーティストを巻き込んで、様々な芸術展覧会や演奏会を日常的に店舗で実施したりしています。

スワンベーカリーが中国の同業者に与えた教えの中で最も重要なことは、「辛抱強さ」と「広めていく姿勢」です。新しく雇った知的障がい者に対して、スワンベーカリーでは何ヶ月もの時間をかけて、辛抱強く待ち、その人の「得意分野」を探しています。彼らの経験とモデルを学びたい同業者に対しては、様々な技術研修を無償で提供し、事業展開の方法や彼らの組織文化を伝授しています。海津氏はこう言っています。「私たちは普通の民間企業ですが、唯一他社と異なるのは障がいを持つ従業員の数が多いということです。私たちのこういった状況は特別でも何でもなくなり、誰も見に来なくなるのが当たり前なのです。今の状況が、明らかに不自然なのです」。この「当たり前の社会」が早く訪れるために、スワンベーカリーは惜しげもなく自分たちの智恵を分かち合っています。

執筆者  李妍焱
執筆者所属
翻訳と校正 翻訳:棚田由紀子、校正:李妍焱
メディア 【藤田和芳等人】《湖湘地理》专辑报道LEAD and Beyond 访日研修活动http://csnet.asia/zh-hans/archives/9323
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