2013/01/23 by Fancy

麗江自然エネルギー視察ツアー紀行

今年11月、東アジア環境情報発伝所の企画で、雲南省の麗江で4泊5日の自然エネルギーをテーマとするエコツアーが行われました。先日、屋久子がツアーの報告会に参加しましたが、写真のスライドショーを見ながら、参加者たちの感想を聞かせていただきました。

バイオマスや太陽光・太陽熱など自然エネルギーの利用及び普及の様子、環境教育の取り組みと問題点、さらに観光や生活様式の変化がもたらしたゴミ問題など、興味深い課題が数多く存在しているそうです。同じく雲南省と交流を行っている団体として、今後彼らの活動を継続的に注目し、機会がありましたら、連携を図りたいと思います。

ツアー参加者の1人、気候ネットワークの桃井貴子さんブログでツアーの内容を詳しく紹介していますが、ここで読者の皆様にご紹介します。

以下、桃井貴子さんのブログ記事です。(朱)

雲南エコネットワーク

雲南省で環境保護の活動をしている市民団体・雲南エコネットワーク。代表の陳さんが今回の雲南ツアーのアレンジをしてくださいました。陳さんの活動は、大学との共同による植林活動、学校や地域での環境教育、再生可能エネルギーの普及と利用管理のアドバイスなど、地域に根ざした活動をされています。

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本当にマインドが高く、素敵な人なのですが、日本では思いもよらないようないろんなご苦労をされていることが伝わってきました。陳さんが描く「人と自然の調和のとれた社会」を目指して、一歩一歩着実にすすめられている地道な本当に頭が下がる思いでした。

豊かな自然が残る麗江では、観光地化したことでゴミ問題などによる環境破壊が急速に進んでいて、陳さんは本当に貴重な人材です。

雲南のバイオマスエネルギー

雲南省麗江市では、政府の再生可能エネルギー推進計画に基づいて、農家でのバイオマスエネルギーの導入が昨年末で250万件に達したそうです。これはまさに中国政府の政策の成果だと思います。

ここで言うバイオマスエネルギーとは、家畜や人間の糞尿をバイオマスタンクに集めて、メタンを発生させ、それを厨房にガスのラインで引いてきて、炊飯やガスコンロとして利用するという家庭用のものです。

陳さんの話では、設備費や建設費は政府からの補助金が十分にあり、かなり普及もしたので、今後は維持管理の方が課題だということでした。導入したものの、バイオタンクの蓋が壊れていたり、ガスコンロの使い方がわからなかったりと、いろいろと問題が出ていて、導入したものの利用されないというケースも少なくないのです。

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せっかく導入しても設備をしっかりと維持管理・運用するという課題は日本にも共通していることかもしれません。

雲南の農村地域(ナシ族・イ族)

雲南省麗江市では、ナシ族やイ族といった少数民族の集落があり、多くの家庭は豚・牛・鶏・山羊などの家畜を飼って、自給自足の生活をしています。麗江市の農村地帯では、洗濯から食事の準備まで川の水を使っているところも多く、きっと昔の日本もこのような時代があったのではないかと思います。私たちが宿泊した宿も、周辺は畑が広がり、朝から鶏の鳴き声が目覚まし時計がわりになります。

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写真:洗濯は用水路で。水はとても冷たいです。

中国政府は、再生可能エネルギーの普及政策で、家畜をかっている地域に重点を置いてバイオマスエネルギーの導入を進めてきたとのこと。家畜の糞尿を使えば、それまで使っていた薪木の利用抑制にもなります。それにしても、地域特性を活かして地域にふさわしいエネルギーで食べ物もエネルギーもすべて自給自足で成り立っているのが麗江の農村地域です。

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写真:こちらがナシ族のおばあちゃん。ご家庭のバイオガスシステムを見せていただきました。ナシ族の衣装の特徴は青いエプロンと帽子。胸にクロスさせた布です。皆さん共通してこの格好をしているので、すぐにナシ族の方だとわかります。

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写真:こちらがイ族のおばあちゃん。イ族は、少数民族の中でも数少ない漆器の伝統工芸があります。この方は、雑貨屋兼お土産を売ったりしている方です。イ族の方の服装は、どちらかというと赤・黄・黒などのカラフルな衣装を着ています。

麗江市内での太陽光発電

日本から麗江には、北京、成都を経由して丸一日がかりで到着します。北京に降り立つと、排ガスなどで真っ白によどんだ空気ですが、麗江はとても空気が澄んできれいです。沖縄と同じくらいの緯度にあり、標高も2500m以上と高いので、太陽光発電にはとても向いていると思います。

実際、新しく建設された幹線道路の街灯はすべて太陽光発電によるものでしたし、農村部でも、ところどころに太陽光発電の外灯が設置されています。導入費用は約2万元(約30万円)程度だそうです。

家庭用の電気の電源として太陽光発電を取り付けているところは見かけませんでした。

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太陽熱温水器

昨年、中国の東北地方に行ったときにも、太陽熱温水器の多さには驚きましたが、こちらはほぼ全ての家庭に導入されていると言っていいほど、屋根にはほとんど太陽熱温水器が設置されていました。家庭だけではなく、お寺などでも太陽熱温水器が屋根についています。

麗江は標高が高いために、日夜の気温差が大きく、今ごろの季節は夜はかなり冷え込みますが、快晴の時、日のあたる場所では30℃近くになった時間もありました。まさに太陽熱温水器の適地です。

この日、久しぶりに虹のアーチを見ました。地元では全然珍しい光景ではないようですが、地面から地面に半円を描く虹は、日本のどこかで見ることができるのでしょうか。。。いいことありそうです。

中国の環境教育

今回、ナシ族の子どもたちが通う農村部の小学校を訪問し、小学3年生の環境の授業を参観させてもらいました。時間は40分。授業時間が週45時間のうち、3時間が“科学”の時間で、その中で環境問題を扱う場合があるということです。

今回の授業のテーマは、「母なる地球をどう守るか?」。気候変動、オゾン層破壊、生物多様性の減少、酸性雨、森林減少、砂漠化、大気汚染、水問題、海洋汚染、廃棄物問題について先生が解説し、子どもたちに自分たちが地球環境を守るために何ができるか考えるとうい授業でした。

「ご飯は何で炊きますか?」という先生の投げかけに、「バイオマス」と子どもたちが一斉に答える姿は、まさにバイオガスの導入が浸透している証だと思いました。

授業方法は先生によって違うようで、今回はまだ若い先生だったこともあってか、これで子どもが理解できたのかいろいろと疑問が残ることはありました。それでも、17人の子どもたちは、外部から知らない人が訪ねてきているにもかかわらず、後ろも振り返らずに、先生の言うことを集中して良く聞いています。子どもたちが一生懸命考える姿には、非常に感銘を受けました。日本の学校で見られる「学級崩壊」のような状況とは無縁のようです。

雲南エコネットワークの陳さんの活動では、子どもたちへの教育が、もっと身近な行動にすぐに移せるような学習プログラムが必要だと感じているようで、学校と連携して、プログラムの導入なども実践しています。ただ、全員がそのプログラムを受けられるわけではないのが残念です。

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ゴミ問題

麗江の環境対策では、再生可能エネルギーの導入という先進的な部分もあれば、陰の部分もありました。なんといっても、ショックを受けたのはゴミの問題です。自然界には戻らない廃棄物が山のように出て、それが野放図に捨てられたり、燃やされている現状を目の当たりにしました。村のあちこちでゴミの山を見ました。驚いたのは麗江市にはゴミ焼却場もなく、すべて家庭で燃やしているというのです。野焼きだけではなく、竈にくべてしまうというのもまたショックでした。プラスチック系のゴミを燃やすと有害物質が出るという認識は全くないようです。

小学校のゴミ焼却場というのがまた酷くて、プラスチックゴミもすべて一緒にされて、そのまま野焼き状態です。陳さんたちは、この現状を何とかしようと、ゴミの分別教育から始めたのですが、それでも追いつかず根本的な問題に直面しているということでした。

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写真:小学校のゴミ焼却場=青天井にコンクリートの囲みがあるだけの場所です。見た時には一部に火がついていました

また最近では、乾電池、電子機器の残骸(有価廃棄物以外のもの)、医療系のゴミなども非常に大きな問題になっているということです。

こうしたゴミ問題は、本来、市のレベルで対策をうつべきところですが、行政もそこまでの意識にまで至っていないようです。市民レベルでできることは、ひとまず分別し、体制ができるのを待つ(いつになるのやら・・・ですが)、ということのようです。

日本でもゴミ問題は何ら根本的な解決ができていない状況だと思いますが、分別の徹底などは日本の手法を情報共有することで少し役立ててもらえそうです。

せめて今、私にできることは、この地にプラスチック系のゴミを残さないことだと思うので、すべて日本に持ち帰ることにします。

拉市海とバイオマスプロジェクト

麗江市には、拉市海というラムサール条約で登録されている湿地帯が広がる湖があります。

生物多様性の宝庫であるこの湖の周辺では、最近、急速に馬場が増え、馬が5000頭も飼われています。この旅の間も、馬は本当にたくさん見かけました。普通に馬がとぼとぼとつながれずに歩いている光景も普通にあります。この馬たちは観光客を乗せて町を歩くための馬ですが、馬が増えたことで環境汚染が深刻化していると言います。

最大の原因は馬糞です。一日に10トンもの量が排泄され、湖の周辺は馬糞だらけ。これによって、水が汚染され、病原菌の増殖など衛生的にも問題があります。

現在、この場所に巨大なバイオマスプラントをつくり、湖周辺で排泄される馬糞を処理することで廃棄物問題、水汚染問題を解決しようという構想があります。バイオガスエネルギーは地元野菜などを使ったレストラン経営に使い、バイオマスタンクに貯まった液肥は畑に撒いて有機野菜をつくるという、一石二鳥・三鳥にもなる循環型システムです。

このプロジェクトにご関心のある方はぜひご連絡ください。

執筆者 桃井貴子
執筆者所属 気候ネットワーク
メディア 桃井貴子さんのブログ(2012年11月20~22日)

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