2012/11/19 by Matsue

四川大地震ボランティアの成長記録(下):心の重荷に抵抗し、退かない

 

より続く)

資金難

計画では、メンタルサポートは被災地で少なくとも3年から5年は継続する必要があった。しかし、ただ中国科学院の科学研究費とその他基金会からの資金援助に頼るだけでは、北川のプロジェクトは継続が難しかった。

2010年、江蘇遠東慈善基金会と北川ステーションは、協力合意に至った。彼らが毎年60万元(約720万円(1元=12円で換算))を支出し、3年間連続でサポートをするというものだ。

時間が経つにつれ、被災地に残るボランティアはどんどん少なくなっていき、多くの人はもう何も問題はないと思うようになった。

現在隊長をしている方若蛟は、2009年12月、ある友人が北川でのメンタルサポートの仕事の状況について話すのを聞いた。話によれば、現地での人手は次から次へと少なくなっていき、より多くのボランティアを必要とするようになっていた。これは彼の予想外だったため、辞めてこの団体に加わったのだ。当時、綿陽の永興仮設住宅区にいたのは10数名のボランティアのみだった。

当時、彼らの業務の重点対象者は、「三孤」(孤独な老人、孤独な子ども、孤独な障がい者)だった。(地震から)1年あまりが経っていたにもかかわらず、多くの人の心は、未だに緊張状態にあった。

彼はあるおばあさんの話をした。彼女の夫は「5月12日」当日、会議に参加しなければならなかった。当初行くつもりはなかったが、おばあさんが行くよう催促したので、彼は結局会議に行った。そして地震が起こり、夫が帰って来ることは2度となかった。それと同時に、子ども1人、息子の妻1人、孫1人も失ってしまった。

おばあさんは以後自分を責めている。いつも自分のせいで夫が災難に遭ってしまったと考えているのだ。同時に、彼女の心の奥底では、夫が被害にあったという現実を信じたくないという抵抗感があり、夫はどこか他のところに落ち着いているとも考えている。

方若蛟は彼女とおしゃべりするという方法を通じ、彼女の夫が被害にあったことは、彼女と直接関係がないということを暗示していった。ゆっくりとだが、おばあさんはこの現実を受け止め、人とおしゃべりをするときには、「おじいさんはどこに行ってしまったのやら」といった類の話はもうしなくなり、これまでよりも敬虔に供養することもある。

 

当事者との対話

「被災地へのメンタルサポートは20年間継続する必要がある」

瀟湘晨報:中国科学院心理研究所が四川の被災地でメンタルサポートの業務を続けてもう4年になりますが、どのような成果があがったとお考えですか。

傅春勝(中国科学院心理研究所・北川メンタルサポートステーション副ステーション長):主に3つあると思います。1つ目は、メンタルサポートのモデルがない中でひとつのモデルを構築しました。北川モデルは、その後玉樹、舟曲、盈江(雲南)でもテストが始まっており、効果はとても良いです。2つ目は、メンタルサポートのスタッフ陣を育成したということです。現在も、続きの研修プログラムを実施しているところです。3つ目は、被災地のハイリスクグループへの直接介入が4,5千人、間接介入が数万人に達したということです。北川や安県の120名の教員に連続4年間の研修を行い、彼らはすでに関連する資質を示す証明書を取得しています。これと同時に、私たちは香港大学とともに、比較的良いコミュニティサービスのシステムを構築しました。

瀟湘晨報:実践状況からみて、我が国の大災害におけるメンタルサポートにはどのような面で問題があるとお考えでしょうか。

傅春勝:メンタルサポートは、数年前はまだ災害救援のシステムに含まれていなかったので、経費不足となり、メンタルサポートのサービス提供に悪影響が出ました。と同時に、専門的なソーシャルワーカーや心理学の臨床ボランティア、専門の心理監督・指導も不足しており、成熟した監督・指導のシステムを構築することができませんでした。

瀟湘晨報:この分野で国には今後何か変化はあると思いますか。

傅春勝:メンタルサポートは、間もなく民政部の減災委員会の体系に取り入れられるようになります。災害救援システムに含まれれば、経費の面で一定の保障があるに違いありません。中国科学院心理研究所は、各分野の専門家の意見を総合して、メンタルサポート救助に関する指導意見を起草しています。

瀟湘晨報:計画では、北川ステーションは来年4月に撤収をする予定です。その後も汶川被災地の心理面の問題に注目をしていくのでしょうか。

傅春勝:私たちの汶川被災地でのメンタルサポートは、臨床から研究まで20年間は続くでしょう。ハイリスクグループに対する追跡調査や、メンタルヘルスサポートを継続していきます。

 

[概況]

潮(うしお)のように押し寄せて去って行ったボランティア

潮のように湧いてきて、潮のように引いていった。これが、「5・12」の震災発生後に四川にやってきたボランティアが劉猛に残した印象である。

共産主義青年団四川省委員会の青年ボランティア業務部部長の李健が紹介するには、「5・12」の震災後、全部で170数万のボランティアが国内外からやって来たという。このボランティアたちは、仕事の内容で分けると、医療ボランティア、心理ケア及び心理慰問の専門ボランティア、身寄りがない人や障がい者のサポートボランティア、そして救援に関する総合的応急ボランティアに大別できる。

ボランティアが集中的に撤退していったのは2008年8月だ。「集中撤退は正常ではない現象でした」。劉猛の考えでは、当時四川にやって来た大量のボランティアは、強い思いにかき立てられて来ただけで、信念に基づいて来たのではなかった。思いだけでは決して続かないのだ。

現在、まだどれ程のボランティアが被災地に残っているのか、政府公表にせよ学界の見解にせよ、概念上の数字はない。劉猛の推算によれば、四川省内の人以外で、まだ都江堰に残りボランティアをしている人は20人に満たない。こうしたボランティアの多くには、ソーシャルワーカーと心理学専門という背景がある。また、「現地の大学生はもう少し多く、長期間ボランティアに携わることができます」

否定できないのは、「5・12」の震災後、ボランティアという以前にはなかった人々の姿が登場し、メディアに「民間の力が初めて集団的に示された」と評されたことだ。楽観的な人は、ボランティアの行動から表れているのは、市民意識と市民道徳の覚醒だとまで考えた。

李健は、当初四川に来たボランティアに高い評価を与えていた。彼らは一種の大きな愛の心を抱き、非常に大きな貢献をしたと考えたのだ。

趙小平が考えるには、ボランティアの最大の貢献は、被災地のボランティアサービスの登場を促し、活動を促進することができたということだ。「被災地のなかには、以前はボランティアという概念が全くないところもありました。現在、徳陽や綿陽、汶川に再び行くと、多くの現地ボランティアの活動が見られます」

 

「専門家の視点」

ボランティア団体は2つの方向に変化しうる

瀟湘晨報:現在ボランティアにはどのような問題があるとお考えですか

趙小平(北京師範大学社会公益研究センター博士):一部のボランティアは、名誉や利益のために被災地に行っています。彼らは被災地に着いてから自分または自分の組織がここにいたことがあるということを証明するためだけに写真を撮り、躍起になって宣伝をするのです。メディアの前でやっていることと、メディアが去ったあとにやってることが違うというボランティアもいますし、人によっては他のボランティアや団体をコントロールしようとする人もいます。

こうした人たちも、客観的にはある程度の仕事をしているのですが、主観的にはやはり自分の達成感のためにやっているのです。

瀟湘晨報:ボランティアが直面している困難にはどのようなものがありますか。

趙小平:主に2つあります。1つは、専門技能の不足、もう1つは資金の不足です。

社会の基層を為すコミュニティでプログラムを実施する際、ボランティアには特に経験があることが求められます。例えば、支援を受ける側の人に強くなってもらう一方、ボランティアには彼らに対する依存心を引き起こさせないことが必要です。あるいは、ボランティアにマネジメントに加わってもらいつつ、マネジメントの混乱が起こらないようにする。と同時に、財務を公開し透明性を保つこともしなければなりません。

資金も大きな問題です。多くのボランティア団体で運営経費が不足しています。こうした場合、ボランティア団体の活動は持続不可能です。資金面に対しては、国の管理がかなり厳しいのです。一般的には、政府と基金会だけに寄付を募る資格があるため、ボランティア団体が資金を獲得するには、政府か基金会に支援を求めるほかないのです。

ただ、政府がボランティア団体に資金を提供することは一般的にはあり得ません。基金会が草の根組織にプロジェクトを実施してもらうこともあり得ません。草の根組織は往々にして専門性に欠けるためです。ただ、草の根組織は、お金がなければ専門性を高めることもできません。これが一種の悪循環を生みだしているのです。

瀟湘晨報:ボランティアやボランティア団体、あるいは公益組織はどのように改善をしていくべきなのでしょうか。

趙小平:ボランティアとその組織の成長は、1種のらせん状の上昇過程です。私が提唱しているのは、価値観をレベルアップするという方法で自身をレベルアップさせるというものです。このほか、良い公益組織が良くない公益組織に好影響を与えるようにすることが必要です。また、一般の人々にNGOの生死を決める選択をしてもらうことも必要です。消費者が商品を買ったり、市民が民主的に投票をするのと同様に、寄付者が優秀なNGOにより多くのリソースを提供するようにすれば、凡庸なNGOは改善をしなければ消滅することになります。

瀟湘晨報:ボランティア組織はどのように転換を図る必要があるのでしょうか。

高圭滋(四川尚明公益発展研究センター主任):彼らに必要なのは、ある分野で専門化を図ることです。人に「魚を与える」のではなく「漁を与える」(魚を捕る方法を教える)ことで、支援を受ける側に自身で能力向上をしてもらう、これこそが根本的な解決方法なのです。

現在、これらのボランティア団体が自分たちで組織を築いていくにはまだ一定の改善が必要です。彼らは、自身の使命や運営モデルについてもっと考えなければなりませんが、方向性としては少なくとも2つの方向に転換していくことができると思います。

1つの方向は、ボランティアの管理機関となることです。ボランティアの登記管理と業務割り振りを専門に行うのです。コミュニティや他のボランティア団体と協力することで、登記したボランティアを協力組織に提供することができます。もう1つの方向として、団体の現在の業務内容に基づき、ある分野でより専門化した団体として発展させることもできるでしょう。例えば、現在多くのボランティア組織が子どもや生徒のためにボランティアをしていますが、彼らはこれらの人々に専門にサービスを提供する団体になることができます。

もしボランティア団体が、以上の2つの方向で専門化を図ることができれば、一たび機が熟すとともに団体が公益組織として登録されるのは、自然な流れと言えるでしょう。

 

出典: 潇湘晨报 ”汶川志愿者成长记录:对抗心结 对抗退却”

http://www.xxcb.cn/show.asp?id=1171728

翻訳:三浦祐介

校正:松江直子

翻訳者及び校正者の所属:日中市民社会ネットワーク

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