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2012/10/31 by Tanada

カギは、ハコモノではなくサービス ~第一回 日中敬老文化とシルバー産業の実践と発展のためのフォーラムに参加して~

中国の老齢人口の急速な増加により、シルバーサービスが需要に追い付かない状態は日増しに深刻になっている。そして、シルバー世代はすでに社会が注目する主要な課題の一つともなっている。昨年末に中国政府が「ソーシャル・シルバーサービスシステムの建設計画(2011年―2015年)」を打ち出してから、多くの企業がどんどんシルバー産業に参入するようになり、そのうちの多くは建設業や不動産業の企業である。その中には、豊富な資金力で大規模なシルバーコミュニティを建設し始めている企業もあるが、サービスやマネジメントの理念が欠けており、専門性も持ち合わせていないために、多くの問題を抱えている。

今年の6月初め、北京で2日間にわたり開かれた「第一回日中敬老文化とシルバー産業の実践と発展のためのフォーラム」にて、日中のシルバー産業界および建設業界の十数名の専門家が、全国各地から集まった300名以上の参加者に対し、自らの研究や実践の成果について紹介した。参加者は、熱心に専門家たちと意見交換を行った。

今回の会議の主催者の一つである北京楽齢合作社は、北京の石景山地区で、低収入層の高齢者向けに、日中の家事サービスと、訪問介護サービスを提供する公益団体だ。責任者の王艶蕊さんは、今年の始めに、CSネットが日本の国際交流基金の協力を得て、計画・実施した2か月のシルバーサービス・トレーニングプロジェクトに参加した。王さんがブログでトレーニングの成果についてシェアしたのが、今回のフォーラムの発起人の目に留まり、相談の末に、一緒に今回の会議を実施することになったのだ。

王さんの熱心な誘いで、CSネットと日本側の代表も今回の会議に参加した。株式会社ユーミーケアの高橋正社長、株式会社コミュニティネットの高橋英与社長がゲストとして発言し、日本でのシルバーサービス事業での経験を共有した。

コミュニティネットの高橋英与社長の講話

質問に答えるユーミーケアの高橋正社長

今回のフォーラムは、中国が現段階で抱える様々な問題、コミュニティのシルバーサービスやそれを担う機関の深刻な不足、施設も粗末で、機能も足りないこと、サービス人員の専門知識やサービス規範の不足など、日本が70年代にすでに抱えていた問題、また中国に特有な、民間投資規模に限りがあること、運営マネジメント方式が遅れていること、業界の発展が遅れていること、国家が担うべき優遇政策が立ち遅れている現状などを課題とした。今回は特別に、日中両国の高齢者政策の研究者、建築の権威、運営マネジメントの業績がよく信頼度の高いシルバー産業機関、シルバー産業のマネジメント実務の専門家を招いて、制度設計、高齢者施設の標準設計やメンテナンス、企業の運営マネジメント等の問題に対してじっくり検討し、中国の国情に合った、シルバー産業が順調に発展するための適切で有効な道を見つける機会となった。

印象深かったのは、一日目の夜に開かれた、グループ交流会だ。元々は2つの部屋に分かれて行う予定だったが、参加者がどちらの部屋に行くか決められなかったので、1つの会議室で行うことになった。昼間の会では十分に質問のできなかった参加者たちは、存分に発言する機会を得て、それぞれの悩みについて次々と話し始めた。

        

しかし、交流会が始まると、双方の対話はまるで食い違ってしまった。中国側はどんどん誘いのメッセージを投げるのだが、日本側に受け取る者がいない。中国 側は、「自分が老人ホームを建てるから、そちらで管理してくれないか」といった具合に日本側と協力したがる人が多く現れたが、このような安易な要求に、日 本側はもちろん答えられない。日本側でも、多くの企業が中国のシルバーマーケットを重視しているのだが、実際に参入していくとなると非常に慎重な態度にな る。ましてやマネジメント面や、サービスの提供となると、シルバー産業の中で最も重要かつ最も難しい部分でもあるため、双方がまだ深く理解し合っていない うちに、中国側がそれを簡単にアウトソーシングしようとすることに対し、日本側は不安を感じ、困惑気味であった。そして中国側も、なぜ日本側が協力したが らないのか分からないという具合だった。

議論が堂々巡りした後、遂に誰かが言った一言がその局面を打ち破った。「政策の裏付けもあり、シルバー産業は次のホットな投資先となるでしょう。私たちも 乗り出したいが、どこから手を付けていいか分からないのです」。この、心の底から出た一言は多くの思いを代弁していた。日本側も、なぜこれだけたくさんの 人がシルバー産業に参入しようとしているのか、また同時に実際の業務を外注しようとしているのか理解することができた。問題が明らかになった後は、日中双 方がさらに率直な意見を交わし始めた。例えば、日本側はどのように経験や手法を提供し、どのように人材養成に協力し得るか。また中国側はそれをそのまま横 取りするのではなく、自身の学習や実践を通して、真に中国に合ったシルバーサービスのモデルを確立すべきだ、など。社会科学院から来ている専門家も、企業 と交流し協力し、理論と実践を結び付けたいと話した。交流会では、日中のシルバー産業の交流を強めたいとの希望も出されたが、これについては、CSネット が道義上、その責任を負うこととなった。

会のあと、参加者からの質問に答える王艳蕊(右)女史

二日目の会では、王艶蕊さんがコミュニティで提供している、シルバーサービスの実践について紹介した。彼女の話はすぐに企業の関心を引き、会の後、多くの人が彼女を取り囲み、協力や習得について打診していた。このことは、ユーミーケアの高橋社長の言葉を思い出させた。「政府の言う『サービス付き高齢者住宅』という言葉は正確ではない、『住宅付き高齢者サービス』でなければならない」。カギはサービスであって、ハコモノではないのだ。シルバーマーケットに参入しようとしている中国の建築、不動産産業の皆さんにはこの一点を知っていただきたい。日本のシルバーサービス機関に学ぶなら、ハード面の設計や先進的な設備だけでなく、彼らのサービス理念、サービス精神、サービスの細部にわたるまで見て理解してほしい。これも、我々が日中の組織交流を図るときに気を付けなければならないことだ。

文:朱惠雯

 

翻訳:三津間由佳

校正:棚田由紀子

翻訳者及び校正者の所属:日中市民社会ネットワーク

 

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