2012/10/15 by Tanada

男子トイレ占拠キャンペーン

2012年2月からたった3ヶ月の間に、「男子トイレ占拠キャンペーン」は全国から反響を得るようになっていた。北京、成都、武漢、南京で次々と「男子トイレ占拠キャンペーン」が展開され、各マスメディアによる支持もこの活動において重要な役割を果たした。南京市の都市管理局の環境衛生部門は、ここ数年に新築・拡張が予定されている公衆トイレでは、男女トイレを1対1.15の割合で設置することを表明した。また、珠海市の人民代表大会が審議・可決した「珠海市婦女権益保障条例」の規定では、公共の場所にある公衆トイレを新築・改築する際には女子トイレの床面積と便器の数を増やし、女子側の便器は男子トイレの1.5倍以上とすることを定めた。

この活動は、西安の女子大学生の李麦子さんが広州で始めたものだ。李さんは「男女平等実現のために、トイレを変えることから始めよう」と呼びかけている。

広州市の越秀公園の正門から南に40メートル余りのところにある公衆トイレは、男子側の便器は3つ、女子側は4つという小さなトイレだ。錦漢展覧センターに近いため人通りが多いが、この付近には他に公衆トイレがない。このため、女子トイレの入口の前には女性が並んで待っているが、男子トイレの前には誰もいないという状況がよく見られる。午前11時頃、李さんと友人らは、「女性の用足しがより便利になれば、男女平等の推進につながります」(訳注: 中国語で「方便」は、「便利である」と「用を足す」という両方の意味を持っている)、「女性への思いやりはお手洗いから」、「彼女を大切に思うのなら、彼女を待たせないで」、等と書いた手製のプラカードを持ってトイレの前に立った。

「ここは男子トイレなのに、なんで若い女性が入口を塞いでるんですか」トイレに入ろうとした中年男性が、いぶかしげに、少しきまずそうに聞いた。男子トイレを占拠するという奇妙な場面を見に来るやじ馬が周りを囲み、一時は歩道が渋滞してしまった。しかし、気まずい状況はすぐに解消された。男子トイレの占拠は一種のパフォーマンスであり、このような活動を通じて、トイレの前に並んでいる女性が、利用率の低い男子トイレを使えるようにすることが目的だからだ。李さんとボランティアらは、男子トイレの入口に立って、トイレに入ろうとする男性に「すみませんが、女性が男子トイレを使わせてもらうあいだ、少し待っていただけませんか。女子トイレは並んでいる人が多くて我慢できなくなる人もいるんです」と言った。承諾を得た後、女子トイレの前で並んでいた女性に、男子トイレを使うように促した。

「男子トイレを占拠することは、気まずいようではありますが、私はこの活動に賛成しています。」トイレの前にいたある男性はこのように語った。この男性の妻は、ちょうどトイレの前で並んでいるところだった。妻と一緒に出かけると、妻がトイレに行くたびに長蛇の列に出くわし、「列が特に長いときは我慢するのが辛そうです」。街中では女子トイレの数が不足しており、政府は女子トイレの割合を増やすべきだ、とこの男性は考えている。1時間余りの男子トイレ占拠キャンペーンの間、トイレの前で待たされる男性達もこの活動に対して理解と支持を示した。ボランティアらはトイレの前で「現状で男女トイレの数の割合は適切だと思いますか」と問うアンケートを行った。アンケートに回答した市民のうち、5名は「適切」、61名が「不適切」、4名が「分からない」と答えた。ボランティアらはさらに、「男性諸君への手紙」と題した「男子トイレ占拠キャンペーン」の趣旨について書いた文章を男性達に手渡した。

李さんは、「権力者の多くが男性であるため、女性の訴えを理解してもらうことが困難なのです。女性は団結して自分達の主張を表明しなければ、本当に問題を解決することはできません。私達のボランティアの中には男性もおり、彼らは性別にこだわらず私達を支持してくれています。より多くの男性が私達の味方になってくれることを願っています」

若い女子大学生として、李さんは男女平等に関連する事業に何年も携わってきている。ある活動の中で、香港における性差別の無いトイレ推進の経過について知った李さんは、非常に啓発を受けた。中国大陸では、女子トイレの前の長い列はどこでも見られる現象で、ショッピングモール、観光地、駅や学校などにおいて、どんな女性でもこのことは身にしみて感じているが、男性はこの状況に慣れきってしまっている。李さんは、どうにかして麻痺してしまっている感覚を刺激したいと思った。男女の権利平等を求めるために、トイレから行動を開始しようと決心したのだ。彼女のアイディアはすぐにボランティア達からの支持を得て、北京の公益団体である「益仁平」も李さんたちに協力してすぐに行動を起こした。その結果、先に説明したような状況となったのだ。

中国では女性が公務員試験を受ける際、婦人科で健康診断を受けなければならない。女子大学生が就職する際に性差別をうけることも珍しくない。また、セクハラも女性が職場において直面しなければならない問題の一つである。しかし一部の女性は「男子トイレ占拠キャンペーン」に消極的だった。これに対し李さんは「団結」と「行動」が最も大切なモットーだと思っている。

「両会」(訳注: 人民代表大会と政治協商会議の総称)の前夜、李さんとボランティアらは両会に参加する代表や委員らにメールを出し、微博(訳注: 中国版ツィッター)でメッセージを送り、さらには正式な提案も書いた。「女性がトイレに行くのに必要な時間は男性の2倍ですが、公衆便所では男子トイレのほうが便器の数が多いという状況があります。海外の例を見ると、アメリカでは90年代初頭に12の州で「女子トイレの数を2倍にする」法案が採択されています。女子トイレの数が男子トイレより多いことは、多くの国の常識になっているのです」。彼女たちは、「都市公衆トイレ設計基準」を設け、公衆トイレの男女の便器数を4:1の比率にすることを義務付け、女子トイレの床面積もそれに相応して増加し、各地方政府の都市管理部門にこの規定の徹底と監督強化を求めることを提案した。努力は報われるといわれるように、彼女たちの提唱により、多くの政治協商委員がこの提案を真剣に検討する、と表明した。

2011年、広州市の政協委員の韓志鵬氏は、地方政府による立法という形式により、トイレの新築・改築時には女子トイレの床面積と便器の数を増やすことを定め、女子トイレは男子トイレの1.5倍とすることを明確に定めた。「男性の委員が女性の用足し問題について関心を示した」ことにより、この問題に対する注目度は新たなピークを迎えた。韓氏の提案により、2011年3月には市の都市管理委員会が「公衆トイレにおける女子トイレの割合増加についての実施意見」を制定し、今後広州市における公衆トイレの新築・改築・増築においては、男女トイレの比率を少なくとも1:1.5にすることを定めた。広州市の都市管理委員会はさらに「広州市公衆トイレ管理規定」を制定し、男女トイレの比率を1:1.5にすることを義務付ける条項を設けた。

その後、李さんと友人らは、男女平等を求めて他方面での努力を続けている。4月9日、李さんと友人らは西安市小寨付近の百盛広場にて、「美人コンクールをボイコットしよう。女性は飾り物ではない。」という趣旨のパフォーマンスアートを行った。

彼女たちは手にした斧で花瓶を壊し、道行く人々の注目を集めた(訳注: 花瓶は、中国語で飾り物の女性の意味がある)。このパフォーマンスアートは、近年美人コンクールや大学のミスコンが普遍的に行われるようになっている中、女子大学生の美しさを消費の対象としている現象や、女性の美の自立問題(訳注:他者から『選ばれる』のではなく、自分自身で美しさの判断をすること)を取り扱ったもので、「男子トイレ占拠キャンペーン」と同様、多くのマスメディアの注目を集めた。

 

出典: 「社会起業家」2012年5月

http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1848_194500.pdf

インタビュー: 欧陽潔、王発財

筆者: 瀋君菡

編集: 李君暉

翻訳:川口晶子

校正:棚田由紀子

翻訳者及び校正者の所属:日中市民社会ネットワーク

 

 

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