2012/10/15 by Tanada

小荷工房(上)

「小荷計画」は北京の工蟻坊コンサルティング有限公司のある取り組みだ。もともと、貧困家庭に生まれ、都市に出て働く低学歴の女性の人材育成をし、NGOの中で専門性が比較的高い基本サービスに携わってもらうというものだ。なぜ「あるプロジェクト」ではなく「ある取り組み」なのか。それは、工蟻坊はもともとこの取り組みを、基金に資金支援を申請して実施する「プロジェクト」にするつもりは全くなかったからだ。人材の必要な団体にサービスを購入してもらい、工蟻坊の労働者を派遣するという取り組みが、現在になって上手く回り出したということだ。

2010年から運営を始めて現在まで、当初の2人という状況から徐々に10数人の女性・子どもが加入してくるまでに発展した。現在は30あまりの団体にサービスを提供している。「小荷計画」のサービス範囲と人材ニーズは日々拡大しており、供給が需要に追い付かない状況だ。

私たちは、ただ小さなことをするだけです

帳簿の代理処理はやっていますか?はい、やっています。

新しい団体の登録はやっていますか?はい、やっています。

税務局まで行って納税申告をしてくれますか?はい、します。

外国人スタッフの就業証と居留証の手続きをしてくれますか?はい、します。

会議の通知を出して名刺の入力をしてくれますか?はい、します。

書類の管理はやっていますか?はい、やっています。

「小荷計画」とは、一体何をするものなのか

「小荷計画」の責任者である工蟻坊の発起人、郭小華は、ハハと笑って言った「実を言うと、私たちがやっているのは、組織の仕事のなかで最下層の仕事なんです。出納や事務、文書立案や秘書業務、書類管理、掃除など、など誰もやらない、やりたがらない、出来ないことを私たちが全てやっています」

「私たちは、小さなことをしているだけです」郭小華は、「小荷計画」の研修生に初めて授業をするときに、はじめに話すのはいつもこのことだ。つまり「私たちは、小さなことをするだけです。皆が団体のオフィスに行ってみると、そこにいるのはみな大学生や、海外からの帰国子女ばかりです。私たちが行く団体は、エリート、人材には事欠いていませんが、小さなことを着実にしようとする人が足りていません。私たちはそういう小さいことを進んでやっているのです」

「小荷計画」がサービスを提供している団体の中には、「Global Call to Action Against Povert(GCAP、貧困撲滅のためのグローバル・コール)」のような国際的な団体や、「中華児童慈善救助基金」といった国を代表する団体のほか、専門スタッフの登録がない様々な国内外の企業や草の根団体などがある。これらの団体は、大規模なものから小規模なものまで様々だ。小規模な団体のなかにはまったく登録をしておらず、いくつかのプロジェクトを実施するだけで、資金受け取りの口座を必要としているところもある。

「小荷計画」の目標は、NGOに下層サービスを提供することで、そのサービスは多種多様である。

「小荷計画」の利用者は、こんなことを頼めるのだろうか?例えば・・・

スタッフに自団体のオフィスに出勤してもらうが、そのスタッフの給与や社会保険は、工蟻坊が管理する ⇒ 大丈夫

スタッフにオフィスまで来てもらわず、工蟻坊のオフィスにいたまま、手形を送って帳簿処理をしてもらう ⇒ 大丈夫

定期的にオフィスに領収書を取りにきてもらい帳簿処理をしてもらう ⇒ 大丈夫

スタッフを2ヶ月間雇用してみたところなかなか出来が良いので、転籍してもらい、賃金や社会保険などの雇用関係も自身の団体に移してもらう ⇒ 大丈夫

自分たちの団体で、業務上問題が発生した場合、送り返して育成しなおしてもらう ⇒ 大丈夫

フルタイム、半日、周1日、周半日などの勤務形態は・・・?大丈夫大丈夫、全部問題ない。自身のニーズをはっきりと伝えさえすれば、どのような形態でも相談して実施することができるのだ。

 

善意が実った結果

郭小華はもともと国有企業で会計の仕事をしていたが、10数年前にレイオフをされて以降、帳簿の代理処理の仕事を始めた。郭小華は友人が多く、彼女に仕事を頼む人はひとり、まとひとりと伝わっていった。顧客が増えるにつれ仕事も増え、処理しきれずに断るしかなくなった。また、財務スタッフ、とくに出納業務のスタッフの推薦を頼まれることもしばしばあった。ただ、人手を必要としている場所が多く、紹介できる知り合いは自分だけでは限界があった。

ちょうどそのとき、彼女の友人のひとりが、知り合いの女の子ふたりのために仕事を探していたのだった。この友人は、盧麗娟といい、郭小華と同じ公益団体「美新路基金(New Path Foundation)」のボランティアだ。

「美新路」の長期に渡る寄り添いボランティアのサービスにはふたつの分野がある。ひとつは、老人の「晩年」に専門に付き添うこと、もうひとつは、河北の貧困地区で故郷に残された子どもの「大きな友だち」になることだ。郭小華は老人向けのボランティアで、携わってからもう10数年経っている。盧麗娟は子ども向けのボランティアで、彼女が友だちになった子どもは、現在既に大学に通っている。ただ、大学に通える子どもは全体のなかで決して多くない。多くの子どもは、高校や技術学校まで何とか進学し、中には中学校卒業後に出稼ぎに出る子どももいる。「大きな友だち計画」が始まって数年来、卒業したばかりの子どもたちは社会に出て、多くが北京に飛び込み、実社会で鍛えられるのだが、学歴の低い子どもはみな、やって来た後に北京での生活の大変さをしみじみと感じる。特に女の子は、困惑にぶつかることが少し多いかもしれない。やがてボランティアたちは、ある事を話し始めるようになった。「私たちが付き添った子どもたちは大きくなったらどうするのだろう?」と。

盧麗娟は、こうした子どもたちのために、初めて北京にやってくる際に必要な基本的な職業的資質の教育や職業生活の生活規則を提供するカリキュラムの開発を始めた。「小さな友人」はそこで学ぶと、自分で仕事を探しに行こうとする。そこで仕事探しのニーズが発生するのだが、そのときちょうど郭小華のところでは、多くの人から財務スタッフ探しを頼まれているところだったのだ。二人が出会った瞬間、火花がはじけた。それなら、私たちの「小さな友人」を育成して財務の仕事をしてもらおうじゃない。

こうして、彼女たちは共同で出資して工蟻坊という組織を登録した。

(続く)

 

作者:寇延丁 (フリーライター)

出典元:中国発展簡報2012年夏号 http://www.chinadevelopmentbrief.org.cn/qikanarticleview.php?id=1328

(編集及び要約して転載)

翻訳:三浦祐介

校正:棚田由紀子

翻訳者及び校正者の所属:日中市民社会ネットワーク

 

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