2012/09/01 by Matsue

北京市民のエコライフを応援―什刹海緑色生活館

2012年夏、4年ぶりに北京を訪れた。ビルと車はますます増え、友人たちは渋滞や大気汚染に渋い顔。しかし私には、市内の緑が増えて潤いが増したように感じられた。「乾燥に強い在来種を増やすならいいわよ。でも、見栄え重視で多くの水やりが必要な植物も植えているの!」と環境NGO「自然の友」理事の康雪さんはやや不満気であったが、道沿いに植えられた色とりどりの百日紅やバラ、涼しい木陰を作るエンジュやアカシア、美しい散歩道のある川辺で風にそよぐ柳、そして郊外に整備された巨大な森林公園などは、まさに大都会のオアシスとして人々の目と心を癒していた。

  

                 元大都遺跡公園                      通州大運河森林公園

自分の生活をよりエコにしたい人も増えているようで、通りから見える高層住宅のベランダには、緑のカーテンも散見された。訪ねた友達の一人はベランダ緑化にあきたらず、郊外に畑を借りて世話をしに通っているそうだ。エコライフを実践するこうした人々を、様々なプログラムで応援するのが什刹海地区サービスセンターにある「緑色生活館」だ。康雪さんの案内で、CSネットボランティアの李君暉さんと三人で訪れた。

什刹海は故宮の北西に広がる三つの湖を中心とした風致地区で、文人・貴族の旧居や昔ながらの家並みが残り、外国人も多く訪れる人気のスポット。2006年、地域の生態・文化スポットを世界共通のアイコン群で分かりやすく表示する環境マップである「グリーンマップ」の中国版制作にあたり、制作者の「自然の友」が真っ先に対象として選んだ地域だ。(右がグリーンマップ)

その什刹海の南側、劉海胡同にある什刹海地区サービスセンターは、教育・文化・保健・スポーツ等様々な機能を併せ持つ住民センターで、前庭は胡同めぐりの人力車の基地になっている。地下には立派な図書室や舞台併設のホールがあり、四合院式の地上部分には、地区の高齢者が通うデイケアルームや障害者の活動室などもあった。

 

  

中央が呉敏さん、右は自然の友の康雪さん、左は李君暉さん  筆者。向かって右側が緑色生活館

明るい中庭を望む緑色生活館は、こじんまりとした、アットホームな空間だ。住民にエコライフ指南をするための様々な資料や道具、椅子と机でほぼ一杯。責任者の呉敏さんは語る。「活動の趣旨は、住民参加により什刹海コミュニティの環境と文化を守り育てるとともに、民間の資源を発掘・活用し、エコライフの啓発や実践を行うこと。住民の交流の場となって、持続的発展を目指すコミュニティの力を高めることです」。行政や他団体と講座やイベントを共催することも多いそうだ。

現在人気の講座は、スプラウト野菜の育て方。もともと北京で買える野菜の種類の豊富さは東京の比ではないが、蕎麦、豌豆、ソラマメなど御馴染の種から、松柳、香椿、馬蘭頭など初めて目にする変わった形の種まで、様々なスプラウト野菜の種を見せていただいた。これらをキッチンガーデンで育てれば、健康と節約の一挙両得になり、フードマイレージも「ゼロ」といいことづくめだ。

  

               様々なスプラウト野菜の種             お菓子型で固めた廃油せっけん

ほかにも生ゴミ堆肥の実践活動、日本のNGOから学んだという廃油せっけんの制作、乾電池回収、布のリサイクル工房、グリーン購入、節水、食の安全といったエコライフ講座や研修プログラムを多く手掛け、地域の特に中高年女性に喜ばれている。そうした女性の中から積極的なボランティアメンバーが生まれ、職員の代わりに主張講座に出向くこともあるという。

緑色生活館はもともと「自然の友」や呉さんが設立した「北京思拓者教育情報諮詢センター」など4つの環境NGOが共同管理をしていたが、現在では独立した民弁非営利団体として登録をしている。中国の多くのNGO同様、呉さんも身分と生存の問題にはずっと悩まされてきた。現在、家賃は免除になったものの、財団や行政からのプロジェクト受託資金で運営している状態だという。呉さんは英国大使館の社会的企業研修やNPI公益孵化器の研修を受け、社会的企業として生存していけるよう模索中だ。「コミュニティビジネスを軌道に乗せたいと思っています。コミュニティの住人たち自身が生活館の主人となり、継続して発展していくにはどうすればいいのか、日々考えています」

呉さんによれば、地区センターの中にこうした環境関連の拠点があるのはまだ珍しいとのことだが、環境意識の高まりにつれ、大手ディベロッパーが手掛ける大規模マンションにも、こうした施設を組み入れる例も出てきたと言う。高度経済成長まっただ中の中国の市民が、今後どのようなエコの妙案を提案してくるのか、注目していきたい。

 

文と写真:松江直子

 

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