2012/09/01 by Tanada

【藤田和芳】中国の週刊誌『湖湘地理』掲載のLEAD&Beyond訪日研修報告シリーズ(9)

E07「大地を守る会」

藤田和芳氏の顔写真

(写真:藤田和芳氏)

1975年に創立した「大地を守る会」は、有害な農薬を使わず、有機農産物を安定供給することを目標に掲げて創業した。1977年、大地を守る会は株式会社となる。初代代表の藤本氏は、1960年代に左派学生運動のリーダーや全国学生連合会委員長を務めた人物だが、すでに逝去している。

大地を守る会は、日本の有機農業分野を代表する社会的企業で、有機農産物や無添加野菜などの安心できる食材のデリバリーサービスを行うパイオニアだ。大地を守る会は、生産者と消費者の間に、風通しが良く、互いに影響し合う関係を築き、双方が利益を分かち合い、土地と環境の保護を促進することを目的としている。

大地を守る会の様子(写真:1975年、創立したばかりの大地を守る会。当時は自分たちで一生懸命商品を売っていた。写真内、向かって右側の青い服を着ている若い男性は、大地を守る会創立メンバーの一人である長谷川氏)

「私たちは農家に、『嘘や誤魔化しはできませんよ、またそうする必要もありません』と言っています。大地を守る会は農家に一定の利益を保証します。ただ、私たちの理念に従えば継続して仕事ができますが、嘘をついたり誤魔化したりして解約処分になれば、いかなる損失も補填しません。消費者に提供するのは信用と承諾で、私たちが提供するのは健康で安全で美味しい農産物なのです。これは、嘘や偽りを決して許さないという理念の下で初めて実現できるものです。消費者の皆さんには、この理念をゆっくりと理解してもらっています。」

2012年3月14日、東京にて、大地を守る会の創始者である藤田和芳氏は、大地を守る会のこれまでの37年間について語った。

中国の現在の有機農業の進展について、藤田氏はユーモアを交えて言う。「中国で、一般的な農産物より2割だけ高い有機農産物を口にできるのは、あと30年後かな」。藤田氏は「もし中国の農業が変わったら、世界の農業も変わるだろう」とも考えているのだ。

 

「当時の会員数は1500人だけ。一度に400人を解約処分にしたこともあった。」

講話:藤田和芳、通訳:李妍焱、編集:劉見華

農家の生産方法:マガモを放って害虫駆除、稲ワラをかぶせて暖を取り、事前に大地を守る会と買い上げ契約を結ぶ

大地を守る会は、2500の生産者会員と契約を結んでいるが、内訳は農家やメーカー、雑貨店などで、全国に分布している。

主体的な農家にするため、契約農家は農薬を使わないことを堅持し、有機肥料を作って使用している。稲作農家なら、マガモを放って害虫を駆除し、その他自然の方法で雑草が生えないようにしている。つまり、生き物を農薬の代わりに利用するのだ。

農家の野菜保管庫も、最初はどこにでもあるようなもので、暖房設備を使用して冷害を防いでいた。今では、稲ワラを覆って暖を取っているので、保温もできるし環境保護にもなっている。

農家はいい技術を皆に伝え、共有した上で改善を加えている。害虫駆除や雑草除去だけでなく、制作加工技術や新しい農作物の試作もそうだし、新しい調理レシピなども共有している。これらの鍵となるのは、「大地」の組織にある。

大地を守る会では、契約農家の生産物をA,B,Cの3つのランクに分けている。一般的に、C級品はほとんどなく、9割はA級品で、残りの1割であるB級品の多くはA級品と抱き合わせる形で消費者に販売する。B級品を売る際は消費者に「訳あり商品のため、お値打ち価格となっております」と知らせる。

大地を守る会では、地理の違いを利用して、それぞれの産地でそれぞれの野菜を計画的に生産している。例えばじゃがいもは、4月は九州で収穫し、6月と7月は関東で、9月下旬から(長ければ翌年3月まで)は北海道で収穫する。このようにして、じゃがいもは年間を通じて供給される。また、農家との契約は収穫の半年前に行われる。秋に販売する野菜なら、春には契約を交わしているのだ。

大地を守る会と農家は、買い上げ価格を契約の際に決める。その後、市場価格がどう変動しようとも、収穫時は契約時に決めた買い上げ価格に従って売買される。有機農産物の価格は一般的なものに比べ価格は2割前後高い。このようにすることで、少なくとも農家は赤字を出さずに済み、基本的な生活を維持でき、翌年も生産を継続できる。決して、会員である農家が一般の農家に比べて、利益が2割多いというわけではない。

例えば高値の時に別の業者に販売するなど、契約農家が契約違反した場合、大地を守る会との協力関係は終わりを告げる。過去に統計を取ったことがあるのだが、それによると、契約農家の収益は契約していない農家の平均額と比べて1~2割高かった。作柄が良い年は、100箱買い上げる契約を交わしていても50箱しか需要が無いこともあるが、大地を守る会は100箱すべてを買い上げる。たくさん売れ残ってしまった場合は、缶詰にするなど処理方法を考える。作柄が良くない年は供給不足になるが、その時はどうしようもないので、消費者には他の店から買ってくださいとお願いするしかない。

 

大地を守る会と消費者、そして農家:もし、誰が作った農産物かが消費者に伝われば、取引関係は友人関係となる。

大地を守る会は最初、新興の団地に行って、何の許可も取らずに青空市を開いて呼び売りをしていた。化学肥料を使わない農作物は虫に食われていて見た目が良くなかったので、正規のスーパーには買ってもらえず、自分たちで売りさばくしかなかった。もちろん、物流問題もなかった。

その後、青空市が「迷惑商売」となったので、商品をほしい人達が10名ないしは20名集まって注文するようになった。そこで発生したのが物流問題だった。大地を守る会は、注文したい人に事前に商品リストを渡し、翌週に販売する予定の商品を知らせた。その後、注文内容に応じて、全員の分を大箱に詰めて送り、注文者が自分たちで分けるようにした。当時、消費者はまだ部分的に大地を守る会に参画していたので、物流も比較的簡単に済んだ。

第3段階に入ると、「迷惑商売」は直接配送になった。まず、各家庭が注文すると、大地を守る会がそれらを取りまとめ、全国各地の生産農家に発注する。大きく整理・統合した過程でこうなった。数万人の消費者に対し、消費者ごとに個別の小箱を用意するのだが、一人当たりの注文が十数種あり、注文する商品はそれぞれ異なるので、少しのミスも無いようにするのは大変難しかった。今はコンピュータで管理しており、受注プログラムも間もなく完成する。

大地を守る会では、農家の田んぼを開放し、消費者も収穫に参加できるよう提唱している。消費者の家族が農家に泊まり、子ども達が仲良しになると、子供同士で文通が始まる。すると、かぼちゃを買った消費者が、手作りのお菓子を農家に送ることもあるだろう。大地を守る会では、このような活動に参加する人もおり、三方(大地を守る会・消費者・農家)の間に互いに顔を合わせる関係ができる。「もし誰が作った農産物かが消費者に伝われば、取引関係は友人関係となる」。

かつて10の農家と契約していたことがあったが、その中で優れた生産技術を持つある農家が、別の農家の技術がいい加減で「有機農業とは言えない」と指摘し、消費者にもそう訴えかけてしまった。消費者側は大地を守る会に代表を送り込んで協議し、そのいい加減な技術の農家を除名するように要求した。大地を守る会は消費者の代表を連れて村へ行き調査したところ、その優秀な農家はこれまで技術の劣る農家を支援することなく、ただ責めるだけで、協力して作業を進める精神に欠けていたことが分かった。すると大地を守る会は、その優秀な農家を解約したのである。「私たちは生産物の出来不出来だけを重視しているのではない、より望んでいるのは友好的な農業だ」。

消費者会員に対しても、状況を理解せず批判ばかりする消費者は、会員の資格に値しないとして、解約した。当時、大地を守る会には1500名の消費者会員がいたが、会員にふさわしいかどうかを判断したところ、一度に400名を解約することになり、経営危機に陥った。しかし、大地を守る会は譲歩しなかった。それはある種の理念であり、このような方法を通して「大地を守る会の態度をはっきりと示した」のである。

農家に対しても、嘘や誤魔化しはできないし、またそうする必要もないことを伝えている。大地を守る会は農家に一定の利益を保証している。ただ、大地を守る会の理念に従えば継続して仕事ができるが、嘘をついたり誤魔化したりして解約処分になれば、いかなる損失も補填されない。消費者に提供するのは健康で安全で美味しい農産物で、決して偽りのものは提供しないということを、消費者にもゆっくりと理解してもらっている。

 

NGOと企業(株式会社)が統合して社会的企業となった。上場の原則は「金儲けをしたいのなら、他の企業に投資すればいい。大地を守る会に参加する必要ない。」

大地を守る会ができた当初は、NGOと株式会社(企業)両方の組織があったが、どちらも長所を持って短所を補う必要があり、「車の両輪のように」協力して仕事を進める必要があった。2010年、NGOと企業が合併し、最終的には社会的企業として統合した。「社会的企業とは、企業とNGOの連合なのである」。

大地を守る会は上場を目指しているが、現在の出資者は消費者会員1800余名、農家1300余戸、そして大地を守る会の職員200余名である。大部分の投資者は、株主になるのは金儲けのためであるが、一部には理想を投資の理由にしている株主もいる。大地を守る会は、その一部の投資家が日本の農業や環境、人々の健康を守る人のために投資してくれることを願っている。

毎年行われている総会では、一部の人がより多くの配当を求めることもあった。そんな時は、他の出資者から「金儲けをしたいのなら、他の企業に投資すればいい。大地を守る会に参加する必要はありません。」と反対の声が上がった。「大地」の投資者にとっての利益とは、そうした人達が主張する社会的利益なのである。大地を守る会が公開している株式は株式全体の半分以下。古くからの株主が過半数の株式を所有しており、「万が一、対立が生じた場合でも、制御できるようにするため」だという。

大地を守る会では、現地の福祉に対する「利益還元」、特に輸入農産物に関しての利益還元も実施している。例えば、東ティモールから輸入されているコーヒー豆がそうだ。東ティモールは2003年に独立したばかりで、それまではインドネシアと20年以上に渡って紛争を繰り広げていたため、基盤となるインフラが整備されていない。そこで大地を守る会は、利益の1%を拠出して、現地に小学校を建設する資金援助をした。

それと同時に、日本の消費者にこのような状況を理解してもらい、現地の農家の置かれている境遇や当該地域の社会状況に関心をもってもらうようにしている。輸入元のパレスチナとイスラエルの紛争でオリーブ油が確実に儲けを生み出す産物となった時も、消費者に現地の戦乱状況を理解して関心を持ってもらい、負傷した人々を助けるための寄付をしてもらった。「大地を守る会が仲立ちして、日本と世界が手を取り合う架け橋をつくり、平和に思いをはせるという望みを広めていきたい」。

 

観察:大地を守る会

「大根の革命」と呼ばれて

胡さんの写真胡昕 Lead and Beyond 研修生(写真人物)

藤田和芳氏が1975年に大地を守る会を創設した頃、日本の農業は大規模生産を提唱し、農薬を大量に使用したため、人体や環境に害を及ぼしていた。当時、藤田氏はこう思っていた、「面倒と思わずに、人々に向かって有機農業と有機食品の宣伝をするくらいなら、自分の手でクリーンな産品を人々の手元に届ける方がいい」と。彼は小さな手押し車を押しながら市街区へ青果や野菜を売りに行った。時には、100本の大根を売りに行ったこともあったが、3、40本がまだ売れずに残っていた。藤田氏は必死で売りさばこうとし、少しでも多く買ってもらえるように試みたが、結局は売れ残ってしまい、大根を抱えて戻り自分で食べるしかなかった。こういう状況だったので、それまでの数年は赤字続きだったが、その後ようやく好転した。大地を守る会が苦労しながら発展してきた様子は、後に「大根の革命」と呼ばれるようになる。

現在、大地を守る会は、中国の非営利組織と提携を結び、共同で社会的企業を設立しようと計画している。国内市場においては宅配業務を展開し、新型の農産物の交易市場を設立したいと考えている。透明で公正な供給の鍵は、都市の消費者のために安全で健康な農産物を提供することである一方、農村地区の生産者のために長期に渡る発注や技術サポート、消費者市場と直接ドッキングするための信頼できる場を提供することである。

(次号で、日中市民社会ネットワーク 翻訳ボランティアチーム担当の季新からの、大地を守る会に関する寄稿文を掲載予定)

出典:《湖湘地理》特集<知日派白書ハンドブック>(PDF)のE07

http://csnet.asia/wp-content/uploads/1fe7d4e592e0aa2c7f8248dd8459e7781.pdf

 

翻訳:棚田由紀子

翻訳者の所属:日中市民社会ネットワーク

 

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